2011.09.30

ブダペストで過去を想像させてくれる温泉・パロアルトで未来を想像する人たち

社内報で出張記を頼まれたので、こんなものを書いてみた。
文才がないとは思っていたが、中学生の作文のようないい加減な内容のものになった・・・。



突然ですが、テルマエ・ロマエという言葉をご存知でしょうか。
古代ローマの浴場のことです。
現代の観光地ローマにはいくつもの浴場跡遺跡がありますし、イギリスにもバス(風呂)の語源になったといわれるバースという町に古代ローマ浴場跡があります。
ヨーロッパ旅行へ行かれた方ならば一度は目にしたことがあるでしょう。

古代ローマに関心がない方でも、気持ちのいい風呂と聞けば、日本人ならば興味が湧いて入ってみたくなるはずです。
彫刻で作られたライオンの口から滔々と流れ出る温泉を受け止める広々とした風呂に、古代ギリシャの美しいビーナス像や咲き乱れる色鮮やかな花を愛でながらお湯につかる。
そんな古代ローマ浴場では、どんな気持ちがするんだろうかと。

この夏の始めに出張した際、現代に残る(といっても遺跡ではありませんが)テルマエ・ロマエに浸かる幸運に恵まれました。
古代ローマ文明圏にあり、ハプスブルク帝国の残照が色濃く残る東欧の古都、ハンガリーの首都ブダペストで一っ風呂浴びたのでした。

屋外の温水プールと言ってしまえばそれまでですが、日本の遊園地にあるプールとは様子が違います。
元気が余っている子供たちの遊び場ではなく、老若男女がゆっくりと楽しめる社会インフラとしての仕掛けがあるのです。
それらは建物の風格であり、花や彫像であり、風呂に入りながら楽しむチェス盤などです。
こういう風呂、日本だって「あり」でしょう。
だれか作ってください(本当に)。
世界にはこんなところもあるんだな、知らなかった。

街の中心を貫いて流れるドナウ川。
風呂上がりの気分を引きずったまま、川にかかる橋の欄干にもたれかかり、風に吹かれながら携帯音楽プレーヤーでシュトラウスの名曲を聴いてみました。
ドナウの川面は青くなく、お世辞にも美しいとはいいづらい。
しかし川の両岸にある歴史的建造物が、観賞に耐え得る風景をつくっているようでした。

ヨーロッパの街はそこにいるだけで「歴史」を感じさせてくれます。
世界史で覚えた地名が標識に記載されていたり、重厚な建築の存在に精神的に圧倒されたり。
それが旅の醍醐味でもあります。
一方でその街の「人」に目がいかなくなりがちです。
ところが歴史が「ない」ところでは、逆に人に目が行くようになります。
例えばアメリカ。

夏の真っ盛り、学会参加のためサンフランシスコ近郊にあるパロアルトという街に行きました。
シリコンバレーといったほうがピンと来るかもしれません。
その街にはこれといった歴史や建築はなく、幹線道路沿いの最近開発された地方都市といった感じです。
ただ、この街にはスタンフォード大学を中心にアップルやグーグルといった最先端のIT企業が集まっています。
世界を牽引する「頭脳」たちがそこいらを歩いているわけです。
どんなすごい人たちなのでしょうか。

IT関係の学会だったからか、参加者の多くは近隣にある施設で働く人たちでした。
彼らの風貌は印象的です。
20年前に日本で活躍していたサッカー選手アルシンドを思わせる金髪の長髪で、学会なのにTシャツにGパンで登壇し、会場内を大きな17インチ画面のマックのラップトップを小脇に軽々と抱えて歩き回る「おじさん」たち。
あるいはヨーガの師範のような風貌だったり。
絵に書いたような自由な人たち。
歴史の教科書の戦後の章で写真を見かけた、ピッピーという感じでした。
もう、「ベタ」なくらいカリフォルニア的な姿であり、コンピューター野郎たちの姿です。
そして議論になると口角泡を飛ばして意見を主張しあいます。
「今」を作っている人の姿が、目に麗しい光景として映りました。
アメリカの歴史は今作られているのだなと。
こんな風景、日本では見たことなかったです。

宿泊したモーテルには小さいながらも手入れの行き届いたプールがあり、プールサイドの椅子に座り水面を眺めて過ごす時間が気持ちよかったです。
隣はちょっとした林で、リスが部屋の窓の下までやってきます。

日本人から見れば、西には積み重なった歴史があり、東にはそれがない自由がありますが、どちらも一長一短ですね。
ドナウにもこのプールの水面にも、その街の特徴が映り込んでいるみたいでした。