2010.07.16

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今となっては懐かしいアンテナの組立作業

【想】一般受けしそうなシナリオでも



特別公開でカプセル回収の広報用に何かよい出し物はないか。
そういう提案を要望された。
一番の基本は、アンテナを展示して解説する。
それが一番だとうだろうし、当然予定されている。
はやぶさ関係のものならば、なんでも歓迎される雰囲気で、
なにかひねりをということなのかも知れない。

何か違ったことをやってもいいだろけど、何がいいか。
人に訴えるのならば、何を説明するにしても物語にするほうがよい。
だから、アンテナチームの出し物も物語で包んでしまえばいい。
ならばこんな物語はどうだろうか?
多少の事実のねじ曲げを入れて、こんなストーリーを出したらどうか。

誰も信じてない。

口に出しては言わないが、「ハヤブサは本当に帰ってくるの?」という疑念をみな持っている。
偉い人やプロマネですら疑っている。
だから、アンテナシステムを作る予算は「ほとんど」ない。

人が集まらない。

DASHの例もあり、砂漠という極限環境で1ヶ月の作業をしてくれる隊員を募っても「優秀」な人は集まらない。
集まったのは、どこか一癖あるような物好きな連中だけだ。
こいつらに共同作業ができるのか、正確な操作が必要なアンテナをみんな使えるか。
放探チームの隊長の不安は募り、でるのはため息ばかり。

あきらめない。

K隊長だけはハヤブサの帰還を信じ、カプセル回収のための秘策を練る。
できることは「あきらめない」で「工夫する」こと、持てる力を最大限に引き出すこと。

低コストでも可能な方法を考える。

アンテナの専門家である隊長は、超低コストな家庭用アンテナに目をつける。
砂漠で動かすには不十分な性能である。
しかし、まともな性能のローターを買うには予算があと10倍必要だ。
そんなものはない。
隊長は考えた。
そして、ローターの性能の悪さを補うことにし、そのためのプログラムも自ら作成した。
自分でやれば予算はかからないから。
それを「しょうもない隊員」でも使いこなせるレベルまで調整していけばいい。
5時になるとさっさと帰る隊員を横目に、徹夜の作業がつづく。
ハードウエアの調整、ソフトウエアの改修、やらなければならないことはいくらでもあるのだ。

ダメ隊員を鍛えるには練習あるのみ。

九州や相模原でアンテナ操作の試験を実施し、「ダメ」隊員にアドバイスし続け、彼らを精神的にも後押しする。
試験で得られたデータを見る。
少しは使えるようになったではないか。
ひょっとしたら、うまくいくかもしれない。

オーストラリア現地入り。

アンテナは4台。
それらはカプセル着陸予定地を取り囲むように周りに数百キロ(脚色)の間隔で配置されている。
それぞれのチームが立てたアンテナの周りには、土と潅木と青空、そしてハエとカンガルーしか見えない。
砂漠に散ったチームからアンテナ不具合の連絡が隊長に届く。
そのたびに、隊長は数百キロ離れたアンテナへと隊長が駆けつけ、問題を解決していく。
結局、隊長はすべてのアンテナ設置場所へ行ったことになる。

疲れたがたまったからだろう。

隊長の乗った4輪駆動車が砂漠で横転する(脚色あり)。
頭から血を流す隊長(血だらけの顔だとカッコいい))
ここで病院に行くわけにはいかない(こうでもしたほうが面白いし、ワクワクする)。
それでもなんとか帰る(な、わけないかな)。

カプセルのビーコンを捕らえた。

再突入の日の深夜。
予想通りの軌道を描いてハヤブサが流れ星になった。
そして見えなくなった直後、カプセルのビーコン電波が捉えられた。
どのアンテナも電波を受信することができ、追跡することができた。
アンテナチームから時々刻々と報告されるビーコンの方位角から、カプセルの位置が推定されていく。
4局中3局が追尾に成功。
本部が確定したカプセル落下地点にヘリコプターで近づくと、砂漠に着地したパラシュートとカプセルが
すぐに発見されという情報をイリジウム電話で聞いた。
そう。隊長は勝ったのだ。

カプセルが回収された夜。

ダメ隊員はいつもまにやら立派な隊員に成長していた。
みんなで祝杯を挙げる。
が、隊長の顔はうかない。
うれしさ半分、悔しさ半分の顔である。
なぜなら、隊長の操作するアンテナだけはカプセルを追尾できなかったからだ。
ちょっとしたミスが原因だった。
「ダメ隊員」というのは、実は俺のことだったのか。
隊長はそう小さく口にして、ため息混じりにくすっと笑ったあと、ゆっくりとビールを飲み干した。

どうかなぁ?
メールで送って感想を聞いたのだが、いいですねぇ、でも無理ですよ。

まぁ、そうだろうなぁ。