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ロンドン日記(2)

十月六日月曜日

 ロンドンからギルフォードへ行く。ラッセル・スクエア近くのホテルからウォータールー駅へどうやって行くか。イングリッシュブレックファーストをとりながら思案していた。ホルボーンかトッテンハムコートロードまで歩きで、そこから地下鉄に乗るのが素直な行き方である。歩いたってたいした距離でははないし、その地下鉄には何度も乗っているから道に迷う心配はない。しかしなぁ。ソーセージを噛りながら雨模様の通りを眺めていた。
 バイキング形式の朝食で、座る場所はどこでもいいということだったので通りに面した窓のところのテーブル席に座り、雨の中を通勤するロンドンのサラリーマンを観察していたのである。
 二階建てバスが頻繁に通り過ぎる。今はちょうど通勤時間帯なのだろうし、目の前の通りはバス通りなのだろう。168番、68番、59番がメジャーなバスようで数分に一台は通る。そして、それらのバスの行き先表示にはウォータールー駅、または経由とある。
 このバスに乗れば簡単にウォータールー駅に行けるかもしれない。バスには乗ったことがないが、なんとかなるだろう。そう決心すると朝食を済ませ、荷物をもってホテルを出た。雨は止んでいた。

 ホテルの近くにバス停があった。バス停には必ずチケットの自販機がある。片道券を2ポンドで買い、やってきたウォータールー経由のバスに乗った。
 運転手にウォータールー駅へ行く事を確認し、二階部分に移動、先頭の席をゲットした。席に着いてから社内を見回すと、二階席はガラガラだった。
 窓が広いので明るい。歩いているときよりも街が大きく見えるのはなぜだろうか。街路樹が迫り来る迫力。なとどロンドンビューを満喫。十分くらいでウォータールー駅に到着。
 二階建てバスの利用は想像したほど面倒なことはなかった。次の停留所名が車内に表示されるし、降車ボタンもある。切符の買い方さえクリアすれば、慣れない観光客でも普通に使えるだろう。ロンドン・オリンピックを控えて改良していたのかもしれない。
 バスは足として使えるようになった。ロンドンでよくわからないのは、タクシーと連ターカーである。コンジェスチョンチャージなんて面倒なものがあるらしいので、ロンドンでレンタカーを使う事はないだろうが、地方へ行くときなどには試したいものである。

 ウォータールー駅で同行者と待ち合わせ。ぼくは約束時間よりも二十分くらい早く来てしまった。コンコースのボディーショップ前で待つ。
 変なところを待ち合わせ場所にしたものである。二年前ウォータールー駅を使っていたときに印象深かったこの店を待ち合わせ目印として指定したのだ。そういう人はぼく一人ではない。ここを待ち合わせ場所にしている人を何人か見かけた。八時半なのに店は開店しているのもすごいが。
 ワゴンでコーヒーを出している売店がある。その女の子は元気な笑顔をお客さんに振りまいている。気持ちよい朝の風景である。ナルホド、コーヒーよりもこの笑顔が目的のお客さんもいるだろう。などと思っていたら同行者が登場した。
 
 ギルフォードまで往復で二十ポンド。高い。グラスゴーから一等車でロンドンまで来ても八十ポンドしないのに。まぁ、仕方ないねと諦め、久しぶりのサウスウエスト鉄道に乗りこんだ。
 ギルフォードには三十分ちょっとで到着した。

 ギルフォード駅の看板に衛星の絵がのっている。サレー大学が街の経済の中心なのだろう。
 駅前からタクシーを使うと約束時刻より大分早く着いてしまう。天気もいいし、同行者も歩きたいと言っているのでギルフォードからSSTL(という会社)まで歩くことにした。
 その選択は誤りだったかもしれない。サレー大学を抜けるショートカットを使ったのだが、それでも五十分かかったから。SSTLに着いたときにはへとへとであった。受付嬢に到来を告げ、無事に約束していた人をまった。

 ロンドンでもそうだし、SSTLでもそうなのだが、二年のブランクを全く感じなかった。昨日までそこに座っていたような気さえした。どうしてだろうか。
 意識は記憶ととともに頭の中にある。記憶がないところに意識は存在しなかったことになるのかもしれない。つまり、記憶がない時や場所には自分が存在したかどうか妖しいと思ってしまうのだ。
 イギリスにいたのは二年前である。色々覚えている。飛行機で日本に帰国した。あっという間である。だからイギリスでの生活ストーリーは、飛行機に乗った時点で仮死状態になってしまったはずである。あっさり終わってしまうと、終了することなく中断してしまうのだ。終わったのではない。
 船で記憶したら大分違っただろう。時間がかかるから。そのように、イギリスでの生活が終了していくストーリーがあれば、再びイギリスに舞い戻ったとしても今感じているような連続性なかったはずだ。
 イギリスでの生活はごく普通の日常が続いたルーチンのような生活であった。しかし、突然終了したので終わったという記憶がない。記憶がないのだからまだ続いている。そんな感じでへんな想いが残ったのだおう。

 そうか。ならば旅の終わり儀式を自分なりに考えていく必要があるかもしれない。あることをすると、旅が終わったのだと自分を納得させられる儀式。飛行機に乗る前とか、ホテルを出る前にすることとか、何か考えておこう。
 
 閑話休題。
 ギルフォードでのミーティングも終え、みんなで少し遅い昼食をひっそりとした林の中の街道沿いにあるパブでとった。林の中を車で車で十分走った辺鄙なところである。なにもない。だからこういうところへは観光で来ない。そんなところに小奇麗なパブがある。そういうところで食べるのである。ぼくのイギリスッぽさである。

 再びロンドンに戻る。ウォータールー駅はなんだか好きなのだ。20番線くらいまでホームが並んでいて、横幅が広い空間に屋根が書けてある。天井が高く、音が響く。銭湯とか大きな教会とかと同じ感覚だけど、駅はそれらとは違う何かがある。なんだか、「さぁ、がんばろ」というような始まる感。
 そんな感傷もそこそこで、再び二階建てバスにのり、ロンドンの生ストリートビューを満喫しながらホテルに戻った。

 今日が最終日である。明日は帰国する。ただし、飛行機は夜なのでもう一日ロンドンを徘徊することはできる。でも、たぶん、大英博物館とナショナルギャラリーだけで終わりあろう。
 今夜はギルフォードへ行った友人・お月さんと夕飯を食べることにした。なんでもいいのだが、ほっておくとまた地球の歩き方になってしまうので「それだけは止めてくれ」とお願いしたところ、ピカデリーサーカス近くのラーメン屋ということになった。
 ラーメン屋。絶対うまくないだろうな。そう思ったのだが、内田樹のブログでもパリでラーメン食べていたことが書いて会ったので、そんなにおかしなことでもないのかもしれない。気が進まないが、自分だったら決していかないところだろう。これもお月さんとの縁であると思い、入って見た。
 太郎という名前の店だった。ラーメン屋ということだったが、日本食の店のようだ。すしもうどんもラーメンも重もの丼物カレーまで会った。実際食べている人がいた。外人さんがカレーライスを食べている。イカにもレトルトっぽいが、大丈夫だろうか。
 早速、もやしラーメンを食べてみた。感想。まずくない。でも、これ商品なのだろうかというラーメンである。ダシがないような感じの醤油スープ。二十年くらい昔、気合いの入っていないライーメン屋だとこういうものだったなぁ、なんて懐かしくなった。悪くないのだが、なんとも物足りないものである。

 帰り道、適当なパブに入った。お月さんがここでいんじゃない、ということで立ち寄った。まぁ、どこにでもあるごく普通のパプで、これといって言うことはない。ぼくはこれでしばらくこのエールともお別れとばかりにロンドンプライドを注文した。日本ではエールはあまり見かけない。この味がぼくにとってのロンドンの味である。

 すこし酔っぱらってホテルに到着。明日はチェックアウトである。手持ちのマルコメ味噌のみそ汁もあと一袋。出張とはいえ旅行が面倒になってきたのは年齢の影響かなと思いながら寝てしまう。

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ウォータールー駅のコーヒー売店

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パブにきたらロンドンプライド

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雨の中のビックベン