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カーライル日記(1)

十月三日金曜日

 グラスゴーからカーライルまで電車で1時間ちょっとである。午前中のセッションに参加したあとロンドンに向けて出発した。次の用事は月曜日であるが、電車で移動には時間がかかるので少しでも南に移動しておくことにしたのである。

 英国で乗る電車には一等車と標準というクラスがある。標準(スタンダード)クラスはいわゆる自由席である。では、一等は個室は個室だったりするのかと想像していたが、そうではないようだ。オリエント急行のようなものではない。コンパートメントでもない。要するに指定席なのだ。ただし、コーヒーだの紅茶だのをボーイさんが無料で配ってくれるところは違う。席の広さは標準と大差ないかもしれない。飛行機のビジネスとエコノミーの差ほどはない。もっとも、料金の違もあまりないのだが。どうせ一時間半の行程だからなんでもいいのだけれど。

 カーライルに到着し、ホテルに荷物を預け、早速ハドリアヌスの壁へ向った。AD122という古代に壁を作り始めた年の西暦という名前をもつバスに乗った。一時間半ではハウスステッズに到着した。
 来る途中の車窓は見ごたえがあった。延々と田園風景が続くなか、ぽつぽつと残るハドリアヌスの壁の史跡を順繰りにバスは回っている。史跡ごとに停留所があるのだ。またこのバスは市バスもかねているので、小さな聚落に立ち寄ることもあった。
 壁を見に行く観光客は車中にはぼく以外にはいなかった。もう観光シーズンは終了したのかもしれない。

 ハウスステッズの駐車場で下車する。ローマ軍の砦の跡は丘の上にある。十分くらいかかる。この辺りは見渡す限り牧草地なのだろうか、緑色の地面が広がっている。羊がたくさんいる。緑の斜面と羊と古代ローマ遺跡。やってきたぞ感を感じる。
 壁が延々とつづいている。それもアップダウンが相当激しい。壁にそって歩くことができる。とりあえず、隣のバス停まで歩くことにした。五キロぐらいだろう。そう思って歩いたのだが、こんな激しい上り坂下り坂がまっているとは思わなかった。いや坂ではなく、階段だろうこれ、というところが何ヶ所もある。しかも相当危険である。手すりがあったり整備された階段があるわけではない。石が埋め込まれているだけなので、よろけたらさようならである。さすがに、自分の足腰を信用するよりない。
 道は丘を越え、林を貫通し、湖の淵をのびている。危険な道だけど、杖をついたひとも見かける。イギリス人かドイツ人が多いようだ。かれらの古代ローマへの憧憬をつよく感じる。似た者同士の雰囲気を感じるのである。
 結局二時間くらい歩いたのだろうか。やっととなりのバス停へとつながる側道へでた。アスファルトの坂道を国道に向けて下る。景色は雄大である。すこし日が傾きかけてきた。風は冷たく強い。夏が終わったばかりでこんな具合なのだから、冬はどうしていたのだろうか。ブリトン島からの撤退命令がでたのは、五世紀だったのではないかと思うが、少なくとも数百年はこの場所で人が生活していたのだ。まったく、ご苦労なことである。

 再びバスでカーライルまで戻る。ホテル近くのパブで夕食をとり、さっさと寝た。大分歩いたのですぐに眠れそうな気がしたのだ。明日はいよいよロンドンである。 

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ファーストクラスで配られた軽食

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ローマ砦跡の全景

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ハドリアヌスの長城